メールや電話での、脳ドックについてのお問い合わせが多いため、この場で一般的な事項を、ご説明します。
当院にはMRI検査の装置はありませんので、ご希望の場合には適切な検査専門医療機関にご紹介して、その結果を当院で総合的に評価しています。
そもそも、受ける必要があるかどうかの判断に迷う場合には、ご相談に乗りますので受診してください。
■ 脳ドックとは?
脳ドックとは、脳や血管の病気を早期に見つけるための健康診断です。自覚症状がなくても、将来脳卒中や脳腫瘍などの重大な病気につながる異常がないかをチェックすることができます。
主にMRIやMRAという画像検査を使って、脳の構造や血管の状態を詳しく調べます。これにより、脳梗塞の原因となる動脈の狭窄(きょうさく)や、くも膜下出血の原因になる脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)などを早い段階で発見できます。
特に以下のような方におすすめです:
睡眠時無呼吸症候群や高血圧、糖尿病、脂質異常症がある方
喫煙や週に3日以上の飲酒習慣がある方
脳卒中の家族歴がある方
忙しくて医療機関を受診する機会があまりない方
将来の脳の健康が気になる方
脳ドックは、病気の「予防」や「早期発見」を目的とした検査です。症状がなくても、一度受けてみることで安心につながるかもしれません。
具体的な主な検査項目は以下があります。
脳の構造を撮影し、脳梗塞や脳出血の痕跡・脳腫瘍・脳萎縮(アルツハイマー型認知症などの認知症疾患の評価のためのVSRAD検査などもあります)・加齢性病変・動脈硬化病変などの有無を調べます。
脳の動脈や静脈を映し出し、脳動脈瘤や血管の狭窄・閉塞などを調べます。くも膜下出血の予防にもつながります。
首の動脈(頸動脈)の血流や狭窄の有無を評価し、脳梗塞リスクの早期発見に役立ちます。
小型の機器を装着して24時間心電図を記録し、一過性の不整脈や心房細動を検出します。心原性脳梗塞の予防に重要です。(当院では病状や本人のご希望により、最長で連続10日間の測定を行います。)
高血圧の要因、糖尿病・脂質異常症の有無や程度、腎機能の異常などを調べ、生活習慣病による脳への影響を総合的に評価します。
記憶力や思考力のチェックを行い、認知症の早期発見に役立てます。
頸動脈の壁の厚さやプラーク(動脈硬化)を確認します。脳卒中のリスク評価に有効です。また全身性の動脈硬化の進行状況を把握する上でも重要な検査です。
上記のいずれの検査も全て、このような「症状が有る場合の保険適応の検査」と「症状が何もない場合の自費検査」とがあり得ます。
症状が有る場合には、健康保険を使って検査を受ける方が、安価で済みますので、ご相談ください。
■ 健康保険のMRI検査と脳ドックのMRI検査の違い
脳のMRI検査には、「健康保険で受ける場合」と「脳ドックとして自費で受ける場合」があります。両者は同じように見えて、目的や位置づけが異なります。
1. 健康保険で受けるMRI検査
ただ単に高血圧がある、とか、たばこを吸っているから、という理由でMRI検査を保険診療で行うことは、認められていません。頭痛・めまい・しびれ・物忘れなどの「何らかの症状があり、脳の病気を疑う根拠がある場合」に、医師の判断で行われる検査です。病気の原因を調べるために必要と認められたときには保険が適用され、自己負担は通常3割です。(高齢者や事情により公費の適応がある方は1〜2割の場合も有ります。)
2. 脳ドックでのMRI検査
一方、脳ドックは「症状がない人」「病気を疑うわけでは無く、病気が無いことを確認したいだけの場合」を対象にした予防的な検査です。そのため、保険は適用されず全額自己負担となります。
つまり、
病気の診断目的 (症状がある) → 保険適用 3割負担で概ね、7500円
健康確認・予防目的(症状がない) → 自費(脳ドック)概ね、1万円~5万円
という違いがあります。
ただし、
などの要因で、各医療機関が提供する脳ドックのMRI診断には歴然とした質の差があります。
脳を専門的に診療できる医師で無ければ、医師であっても脳ドックの質とその価格が、適正であるかを判断するのは困難です。
■■■まとめ■■■
高額な脳ドックを受ける前に、本当に今の自分に必要な検査を判断しなければいけません。また保険で出来る検査がないかを事前に医師と相談することが大切です。また、特にMRIについては、医療機関ごとの検査の実力が大きく異なりますので、どこで受けるのか?、も重要なポイントです。